ひざ痛の原因 疾患の見分け方

ひざ痛の原因は何だろう…。朝起きた時や歩いた後、同じ姿勢で長い時間を過ごした後、運動をした翌日…、膝の関節の痛み、動かしにくい感じは何だろう…。

膝関節の痛みや腫れ、こわばりは、膝に何らかトラブルを抱えているサイン。

重要なのは、その症状や痛みからひざ痛の原因である「疾患」を見分ける。そして、早目に、適切に対処することです。

ひざ痛の原因、初期症状から疾患を見分けて早目の対処が大切
ひざ痛の原因、初期症状から疾患を見分けて早目の対処が大切

 

膝の違和感、ひざ痛の原因は…

ひざの痛みや違和感は、成人女性のおよそ半数、男女を問わず中高年世代の6割以上が感じています。

膝の違和感やひざ痛の原因として、最も疑われるのは変形性膝関節症という疾患です。膝関節以外にも症状が現れるようなら、関節リウマチや痛風・偽痛風といった疾患の可能性もあります。

また、年齢を問わず、過度な運動を行ったために起こる運動障害、極めて稀ですが、関節に入った細菌が引き起こす感染性関節炎(化膿性関節炎)もあり得ます。

いずれも関節に痛みを感じるので、判然とし難いのも事実です。ただ、ひざの痛み以外の特徴的な症状から区別でき、対処の仕方も異なります。

 

ひざに痛みを感じる疾患の見分け方

ひざに痛みを伴う疾患は、初期症状や痛みの特徴などから見分けることができます。
 

膝痛 変形性膝関節症

ひざ痛の原因のおよそ8割は、変形性膝関節症という疾患によるものです。

膝関節の軟骨や半月板が擦り減ったり欠けてしまうことで、ひざの周囲に炎症を起こし、痛みを感じさせます。ひざ痛の原因、痛みの原因は炎症ですので、初期段階は安静にしていれば次第に緩和します。ただ、軟骨や半月板の損傷が改善することは無く、放置すると確実に重症化します。

初期段階では、膝を動かすと「ポキポキ」「ジャリジャリ」など、膝がスムーズに動いていないような音がします。または、「きしむ」「こわばり」「ぎこちない」など動きの違和感があり、手を当てると「ゴリゴリしている感じが伝わる」などの前触れ症状が現れます。

変形性膝関節症の初期症状について詳しくは、「膝から音が…変形性膝関節症の予兆⁈」を参照ください。

膝痛 運動障害(ひざの関節障害)

膝が熱を持つ、腫れる、違和感といった症状が、運動の直後から数日以内に現れます。そして、大抵の場合はひざ周りの筋肉痛も伴います。

歩く時には体重の2~3倍、走ると4~10倍もの負荷が膝にかかります。過度な運動が膝関節と膝周りの筋肉に大きな負担をかけたため、関節と筋肉が炎症を起こします。ひどい場合は、半月板が割れたり、じん帯の断裂を起こすことも。

ひざ痛の原因は炎症ですから、痛みは次第に緩和されるはずです。強めの運動をした覚えがあるなら、患部を冷やすなどをして様子を見ましょう。

運動を始める前後に身体をほぐす、クッション性の高いシューズを着用するなどが予防として有効です。そして、何より過度に運動をやり過ぎないことが重要なのは言うまでもありません。

また、中高年世代の場合は、長年酷使した膝関節の軟骨が擦り減り気味です。軽度の変形性膝関節症であることも少なくありません。ウォーキングやゴルフなど、それほど過度でない運動でも痛みを感じるなら、ひざ痛の原因は変形性膝関節症によるものの可能性も十分にあります。

参考資料:MSD マニュアル家庭版「運動障害」

  

関節痛 関節リウマチ

自己免疫の異常が原因で、膝と限らず全身の関節に炎症が起こる疾患です。患者は7~8割を女性が占め、30代から発症が増えます。

初期には、朝起きて暫く手や足の指が動かしにくい「朝のこわばり」が見られます。手足の指や手首などの小さな関節に腫れと痛みを感じることが多く、原因不明の微熱や倦怠感が続くのも特徴です。

痛みは炎症によるものなので、痛みを感じる関節は腫れて熱を持ちます。

鎮痛薬や湿布薬などで一時しのぎをしていると、関節の破壊が進んで悪化します。思い当たるなら早目にリュウマチ科を受診、適切な治療を受けましょう。

考資料:日本リュウマチ学会 症状・病気をしらべる「関節リウマチ」

  

関節痛 痛風・偽痛風

痛風と偽痛風は、関節の激痛や腫れなどの症状が前触れなく発作的に起こる疾患です。

痛風は、ある日突然足の親指の関節が腫れて激痛に襲われる、男性に多い病気です。発作的に起こることから痛風発作とよばれ、2~3日は歩けないほどの痛みが続きます。

足の親指のつけ根以外に、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節にも発作が起こることがあります。痛みは徐々に和らぎますが、放置していると発作を繰り返し、次第に悪化していきます。

偽痛風は、痛風に似た症状の別の疾患です。尿酸値など痛風の原因と無関係の疾患であることから、偽痛風と呼ばれます。

いずれも膝関節以外にも手首や足首や肩にも発症し、激烈な疼痛を伴います。また、膝に水がたまって腫れあがり、発熱などの全身症状を伴うことがあります。症状は1週間程度で消失するのも特徴のひとつです。

いずれも医師による治療、投薬以外に痛みを緩和する方法はありません。症状に覚えがある、発症したと感じたら、早急に受診しましょう。

日本整形外科学会 症状・病気をしらべる「痛風」日本リュウマチ学会「偽痛風とは」

 

関節痛 感染性関節炎(化膿性関節炎)

身体のあらゆる関節に起こる可能性があります。膝関節での発症が最も多く、他に股関節、肩関節、足関節にも多く発症します。

感染性関節炎は関節に細菌が入り込んで感染し、炎症を起こす疾患。そのため、関節に体液がたまり激しく痛み、腫れやこわばりが生じます。また、発熱や悪寒などの全身症状を伴うこともあります。

細菌は、多くは他部位の炎症から血液を介して関節内に侵入します。または、深部にまで達するような外傷から、あるいは、細菌が付着した注射器による注射や、さらには、ダニ、イヌ、ネコ、ネズミなどの生物に噛まれることでも体内へ侵入します。

抵抗力・免疫力が高く健康な成人が感染性関節炎(化膿性関節炎)を患う可能性ほとんどありません。幼児や高齢者、糖尿病、血液透析、薬物の常用などで治療中の人は、感染に対する抵抗力が落ちているためかかりやすく、そして、治りにくくなるという傾向があります。

参考資料:MSD マニュアルプロフェッショナル版「急性の感染性関節炎」

  

 

ひざ痛の原因と疾患の見分け方:まとめ

ひざ痛(膝痛)は、高齢者が要介護になってしまう大きな原因のひとつ。

認知症、脳卒中、衰弱、骨折・転倒に次いで多い疾患・症状です。安静にしてやり過ごす、湿布薬を張るなどの自己療法で片づけてしまうと、一時的には痛みが和らいだとしても、かえって病状を悪化させかねません。

ひざ関節に痛みや腫れ、こわばりを感じたら、初期の症状を見逃さないこと。

症状をしっかり見分け、ひざ痛の原因となっている疾患を特定。そして、早目に、適切に対処することが大切です。