靴のシャンクが疲労を軽減

靴の中に仕込まれる「シャンク」という聞きなれない部材。

良い靴の条件・選び方でも触れましたが、シャンクは靴の背骨とも呼ばれます。足を支え、立つ、歩く、走るという動作を支えています。

つまり、靴にシャンクが入っているか否かで、歩きやすさはもちろん、疲労の度合いまで大きく違うのです。

シャンクの入った靴の断面図©regal.co.jp
シャンクの入った紳士靴の断面図 画像©regal.co.jp

 

靴のシャンクとは

シャンク(shank)とは、靴底の土踏まず部分に仕込まれた心材「シャンクピース」の略称。

靴のシャンク©オリエンタルシューズ
靴のシャンクは、イタリアの高級靴・フェラガモの創設者が「ヒールとソールの段差を強化するもの」として発明したとされています。画像は最も一般的なシャンクの例 ©オリエンタルシューズ

「ふまず芯」あるいは「靴の背骨」とも呼ばれます。

具体的には、靴のミッドソール(中底、靴底と中敷の間)の、踵から土踏まずにかけて埋め込まれる、金属やプラスチック、カーボンなどの素材で作られてた棒状、またはプレート状の部材のことです。

靴の土ふまず部分を補強する、足元を安定させる、バネの役割などを担っています。

全ての靴にシャンクが入っている訳ではありません。

パーツが増え、製造工程が複雑でコスト高になる。
外見に関与しない。
そもそも、シャンクの機能が知られていない。

などの理由から、安価な靴や靴底がフワフワと柔らかい靴、見た目重視の靴などには、大抵シャンクは入っていません。

ランニングシューズやスパイクなど、各種スポーツ用のシューズでは、重量や強度、機能的な面から、シャンクを埋め込むのではなく、靴底の形状や素材にその役割を持たせた「シャンクソール」と呼ばれるものを採用している場合もあります。

シャンクソールの例
土踏まず部分が補強されたシャンクソールの例

また、現場で履かれる安全靴は、職種・用途次第でシャンクの有り無しを選ぶべきです。

例えば足裏の感覚がとても重要な鳶職人さん達。足裏で凹凸や踏んでいる感覚が伝わるので、シャンクは無い方が良。逆に、同じ現場でも、監督さんや警備員、搬入、内装などなど、足元の不安定な高所などでの作業ではない職種の場合は、もちろんシャンクの入った安全靴が適しています。

 

シャンクの有無で疲れが違う

靴のシャンクは、体重による土踏まずの落ち込みを抑制します。また、足裏のアーチを補助し、バネの働きで蹴り返す力をロスなく伝えます。

さらに、地面からの着地の衝撃を和らげ、靴が捻じれて不安定になることを防いでいます。

そして、シャンクが入ることで硬くなった靴底が、靴の形崩れを防止し、足あたりを維持します。

これらの機能が履き心地と歩き易さを生み、疲労の軽減に直結します。

つまり、人を支える靴は、シャンクに支えられているのです。それこそが、シャンクが「靴の背骨」と呼ばれる所以です。

 

逆に、シャンクが入っていない靴の場合…

世界で最も売れたスニーカー、ADIDASのSTAN SMITH
世界で最も売れたスニーカー、ADIDASの「STAN SMITH」は、シャンクが入っていない見た目重視な靴の代表格
  • 靴が踏ん張ってくれない
  • 推進力が逃げてしまう
  • 不整地などでは、身体が不安定になりがち
  • 着地時の衝撃がダイレクトに伝わる(靴底フワフワ以外は、靴底が薄いことが多いことも理由)

など、靴としての機能が劣るため、無駄に力を使って補っています。

足裏の筋肉の無駄遣いが土踏まずを疲れさせ、低下に拍車をかけます。そして、ふくらはぎ~太腿~臀部と、下半身の筋肉は緊張状態が続きます。

つまり、シャンクが入っていない靴は、一言で言うと「疲れてしまう靴」なのです。

下半身の筋肉の緊張状態は、腰やふくらはぎの重だるい感じの原因になっています。

「そんなの僅かな違いでしょ…」と思われるかも知れません。

ただ、立つ・歩く・走る。長い時間や距離を続けるのなら、その差は決して少なくありません。

背骨が無い=弱い靴なのですから当然です。

 

その靴は大丈夫?

何だか疲れて…それは靴のせいかも知れません。シャンクの有無を確認してみましょう。

指の付け根あたりだけが折れ曲がるなら、それはシャンクがキッチリ効いている証拠。靴屋さんの商品ではやり過ぎ禁物ですよ。念のため

今履いている靴、または、購入を検討している靴にシャンクが入っているのかどうかを確認するには?

  • ザバ折りのように靴をグイッと曲げてみる
  • 雑巾のように捩じってみる

のいずれかで、すぐに違いが分かります。

シャンクの入れられた靴は、土踏まずが折れ曲がったり、大きく捩れたりしません。

 

お気に入りの靴に何とかしてシャンクを…

お気に入りの靴や、職場指定の安全靴など、シャンクの無い靴。

何とかして疲れを軽減したい…
靴底を剥がし、シャンクを入れてから元通りに…

なんて、全く不可能ではないものの、相当な費用が必要ですし、現実的ではありません。

でも、別の方法で近い状態にすることは可能です。

インソールはシャンクの代用になります。
シャンクの入っていない靴(左:全体にカーブ=蹴り返す力が逃げている)に、インソールを入れると(中央:土踏まず部分が折れ曲がっていない)、歩行の蹴り返しの力が逃げないなど、インソールの本来の機能・効果と合わせることで、十分シャンクの代用になり得ます。右は今回使用したシダスのインソール「マルチ+」。

それは、しっかりと硬いインソールを靴に挿入することです。

例えば、既製品の「スーパーフィート」というインソール。

ヒールスタビライザー部分(踵から土踏まずの部分を言います)がかなり硬く、靴に挿入することで、シャンクの入った靴に近づけることができます。

ただ、硬すぎて、土踏まず部分などへの突き上げ感が強く、合わないと感じる人も少なくないようです。

そんな人には「シダス」の既製品インソールがお勧めです。

適度な硬さで突き上げ感は少なく、スーパーフィート同様、靴にシャンクを入れたような効果を得ることができます。

いずれもサポートの強弱、主な用途などにより、いくつか種類があります。概ね4,000円~10,000円ほどの価格で購入できます。(当店では、既製品のままの販売、取り扱いはありません。)

足あたりが良いだけの柔らかいインソールでは話になりません。元々靴に入っていたインソールも、もちろん、100均ものも論外。

 

より高い効果を得たいなら、オーダーインソールがお勧め

既製品インソールでも一定の効果は期待できます。

ただ、ひとり一人の足にフィットさせるオーダーメイドインソールの方が、高い効果が得られることは間違いありません。

  • 足の骨格配列の崩れを、正常な形へ近づける
  • 身体のバランスを整える
  • 土踏まずの負担を軽減する
  • 着地時の衝撃や、足裏にかかる圧力を分散する

それらは、疲れの軽減はもちろん、扁平足や足裏の痛みなど、様々な足のトラブルを改善することにも繋がります。

価格は15,400円~17,600円。既製品のインソールに比べると高価ですが、その分効果も期待していただいて大丈夫です。