まだ履ける?靴の寿命と買い替えの目安

履きなれた靴、お気に入りの靴。いつまでも履き続けたくても、一生履き続けられる訳もなく、いずれは買い替えなければなりません。

だけど、靴のどこが、どうなったらもう履けないのか、靴の寿命はどこをチェックすれば良いのか…。
今回は靴の寿命、買い替えを考える目安、永く履き続けられる靴の寿命を延ばす方法についてお届けします。

さすがにこうなると、誰もが寿命と納得できる?!
さすがにこうなると、誰もが寿命と納得できる?!

靴の寿命

およそどんな種類の靴であれ、履き始めて暫くすると足へのフィット感が増してきます。素材が柔らかくなったり伸びたりする、歩き方の癖に応じて靴底がすり減ったりするためです。

特に革靴の場合は「履く程に足に馴染む」などとも言われます。

自分に合っている、快適に履けるのですから、靴としての性能が増したと言えなくもありません。ただ、フィット感の向上は変形や摩耗によるものなので、製品として意図された機能や性能が損なわれていることは間違いありません。

永く履き続けていると新品の時のようなハリを感じられなくなるだけでなく、次第に形状は崩れ、擦れたキズや落ちない汚れ、クッションがヘタるなど、ヨレて古びた感じになってきます。

さらに履き続けていると、アッパーが破れたり穴が空いたり、靴底がツルツルになる、臭いが取れなくなる、踵が大きくすり減って…。

職人が伝統的な製法で作る高価な靴、何度も繰り返して修理できる一生モノの革靴などの例外を除くと、いくら大切に履いていたも、靴はいつか寿命を迎えます。

寿命を過ぎた靴は、足を守るという靴本来の機能を失い、怪我や捻挫、つまづき、転倒などのリスクが高まります。

さらに、足・足指・ひざ、身体のバランスなどに悪い影響を及ぼします。延いては、足と足指の疾患、身体の不調を助長してしまう可能性すらあるのです。

 

靴の買い替えを考える目安

毎日のように履いている靴をふと見ると、破れていたり、汚れて古びた感じだったり。場合によっては傾くほどに靴底が大きくすり減ってしまっていたり。

そうなると誰もが「これほど履いたのだから、そろそろ買い替え時かな…」と感じるでしょう。

相当に履きつぶしていても「まだ破れてないから履ける」「くたびれているけど履ける」「まだ1年ほどしか履いていないし…」なんて、人それぞれに靴を買い替えようと思うタイミングが違うのは当然ですし、ついつい買い替えを先延ばしにしてしまうケースも多いのではないでしょうか。

個々の思い込みはさておき、一般的な靴の寿命、買い替えを考えるタイミングは「見た目」「摩耗」「使用状況と経過年月」などから判断します。 

 

靴の寿命を見た目から判断

多くの人が靴を買い替えようと思うタイミングは「靴の見た目」からの判断でしょう。

汚れが酷い、くたびれた感じなど、単純な見た目からの印象ということではなく、「靴の見た目」から靴本来の機能を損なってしまっていることが分かります。

履き口の破れ、踵部の潰れ

踵をしっかり押さえることができなくなっています。履き口のクッションも痩せてしまっているでしょう。

いくら靴紐を締めても踵がスポスポするなど、足と靴のフィット感も悪くなっているはずです。

靴紐を締めても足にしっかりフィットしないため、靴の中で足は滑り、蹴り出す力が逃げるため、無駄に疲れてしまいます。

足首のグラつきは捻挫に繋がり易く、フィットできない靴は外反母趾内反小趾扁平足足底筋膜炎タコハンマートゥなどの足と足指のトラブルを招きます。

アッパーの破れ、ほつれ

足を守るという靴本来の機能を失いつつあります。穴が開いたり破れたりして足指が見えるほどなら当然です。

それほどではなくても、踏ん張った時などに大きく裂けて怪我をしてしまう可能性があります。 

履き口やアッパーのほつれ、破れは「もう十分に履いた」というサイン。

分かり易い買い替え時の目安で、間違いなく他にも様々な部分の摩耗や劣化も進んでいるはずです。

「まだ履ける…」は、そろそろ買い替えを考えるべきタイミングですよ。

 

靴の寿命を摩耗から判断

靴底のすり減り具合も多くの人が靴の寿命を判断するポイントでしょう。寿命の判断は以下の点を見てください。

踵が大きくすり減っている

安価なスニーカーなどを除き、靴底はいくつかの素材を何層か重ねて張り合わせられています。そのうち、一番地面側の1枚分だけが摩耗に強い素材を用いられていて、よくすり減ってしまう踵部は、やや厚めになっています。

言い換えるとこの1枚分が踵のすり減りの許容範囲。次の層がすり減っていない内なら、大抵の場合はすり減ってしまった踵部の修繕も可能です。

逆に、これを超えると急激にすり減るようになるだけでなく、踵が傾いて着地するためO脚を進行させたり、ひざ痛の原因に繋がります。

靴底がツルツル

滑りを防ぐための靴底の凹凸がすり減ってツルツルになっている部分があると、雨の日などは滑って転倒してしまう可能性が高いことはもちろん、滑ることで一歩毎の蹴り出す力が逃げています。

必要以上に力を込めて蹴り出しているため、下半身、特に下腿の疲れに繋がります。

靴底の外側、または内側がひどく片減りしている

主に骨格の構造が原因で歩き方に強い癖を持っています。外側の片減りはO脚、内側の片減りはX脚が原因であることが多く、片減りした靴を履き続けることでその進行を確実に助長してしまいます。

O脚、またはX脚の自覚がある人は、将来のために早目に買い替えの検討を。

想定していない部分のすり減り

靴底の一番地面側をアウトソール、中間をミッドソールと言います。

足の中指のつけ根あたりのアウトソールがすり減って薄くなり、ミッドソールまで摩耗が進んでいるようなら、これも分かり易い買い替え時の目安です。

そこはすり減ることを想定していない部分ですから、履き続けられるはずもありません。

靴底のすり減り方には歩き方の癖が出ます。興味のある方は「靴底の減り方で分かる!歩き方の癖と足のトラブル」を参照ください。

 

使用状況と経過年月で判断

靴を販売する際に「この靴はどれくらい持ちますか?」と時々聞かれます。歩き方や頻度、時間、距離によるのはもちろん、体重や筋力、歩き方の癖、保管状況なども靴の寿命に大きく影響します。

ここではスポーツ・競技に用いる靴を除きます。

どれくらいの距離・時間を履けるのか

メーカーの理論で言うと、製品の意図する機能や耐久性が十分に満たされるのは、靴の種類を問わず500km程度とされています。

これは、大雑把ですが、歩数にしておよそ750,000歩、毎日1時間・4km程度歩く人なら僅か4カ月…。

一つの目安ではありますが、あくまでも製造側の理屈なので「メーカー保証」程度に受け止めて、真正直に鵜呑みにする必要はありません。

しっかり作られた靴なら、少々手荒に扱っても、少なくとも倍以上の距離・時間は履いても問題ないと思われます。

経過年月(耐用年数)

素材を張り合わせるための接着剤の強度、クッション素材のウレタンが湿気によって加水分解するなど、履いた距離や時間に関わらず、極端に言えばたとえ未使用でも、素材が劣化することで靴は寿命を迎えます。

これもメーカーの理論では、耐用年数は3~4年程度としていますが、お手入れと保管状況次第で倍くらいは十分に持つかと思います。靴が本当に劣化してしまったら、突然靴底が剥がれてしまうなんてことも。

 

日頃のお手入れと保管について「靴のお手入れ 5ツの基本」や、靴のお手入れ商品の国内最大手コロンブスさんのホームページなどを参考に、ほんの少しでも今より大切に扱ってあげれば、靴の寿命は大きく延ばすことができますよ。

 

以外と短い靴の寿命

新品の時に感じた履き心地・クッションは確実に劣化し、靴底はすり減って滑り易くなる。アッパーや履き口が破れたり伸び広がったために、次第に履き心地はルーズなものに…

靴の寿命は意外と短く、履きつぶした、寿命を過ぎた靴を履いてご来店される方も時々おられます。

買い替えの為に当店、靴屋を訪れているのですから当然なのかも知れません。だけど、寿命を過ぎてしまった靴が足と足指のトラブルの原因になったかも知れない事を知ったら「まだ履ける…」なんて思わなかったかも知れませんね。

靴の寿命、買い替える目安は、あくまでも目安です。

判断はご自身が下すもの。「その靴はもう寿命を過ぎている」なんて脅したりしませんし、買い換えを強制しませんので、安心してご来店ください。